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警察が地域警察官をGPS携帯で監視。 

「衛星で監視」地域警察官にGPS携帯 警視庁

交番などに勤務する地域警察官の位置情報を把握するため、警視庁は衛星利用測位システム(GPS)付きの携帯電話を使った新システムを導入する方針を決めた。来年度にも一部警察署で試行を目指す。



フジテレビで電車男の再放送をやっているので、最近はそれを見るのが日課になっているのですが、電車男を見ようと思ってテレビのスイッチを入れた時にやっていたのがこのニュースでした。
どう考えても立川署の警察官が勤務中に知人女性を殺害したという事件が原因のようにみえるけれど、

警視庁では約5年前から、警察無線の不感地帯を補完する携帯端末の開発を検討。


していたらしく、立川署の警察官の事件はあくまで引き金的要因にすぎなかったようです。

さて、テクノロジーの進歩が現場に適応される時、技術の導入以前と以後では大きく変化してしまうものがあります。そこにはメリットもデメリットもあるはずなので、導入に抵抗感があったり反発があったり、もしくは推進するための宣伝があったりします。
今回のGPS携帯による現場警官の管理に対し、警視庁は

警察署や通信指令本部がリアルタイムで各警察官の位置を把握し、「緊急配備などに迅速、的確に対応できるようにしたい」と説明。端末にはトランシーバーのように同時通話できたり、110番の内容を文字情報で受信できたりする機能も付けたい


としています。
これは地域住民にとっては利点です。自分達を守ってくれる警察が、さらにしっかりと仕事をしてくれるようになる…みたいな感じだと思います。

その一方で、実際にGPS携帯を持たされる現場の地域警察官にとってはどうでしょうか。すぐに上から的確な指令が降りてきて、事件解決に繋がるというのならメリットだと思います。
でもこの技術は邪魔だと思う人もいるはずです。すぐ思い浮かぶのはこち亀の両さんですが、両さんにとっては死活問題です。勤務中にパチンコに行けないし、喫茶店でサボったりすることも出来ません。いや、しなくていいんだけど。

GPS携帯の導入というのは、現場の警察官にしてみれば「自分達が信頼されてない」ことを確認させられることだと思います。「お前ら両津みたいなことしてんじゃないの?両津程度ならまだマシだけど、コソコソ隠れてめちゃくちゃ悪いことしてんじゃないの?」という不信の目を向けられていることを体感しながら勤務しなければならないというのは大変なことだと思います。地域住民だけでなく、仕事の上司も現場の警察官に不信感を持っているという板挟みの状態です。

実は両津勘吉巡査長は大原部長によってGPS携帯のような感じの行動監視をされたことがあります。その時は犬に探査機を取り付けて、自分は監視下から逃れたような話だったと思います。
他にもこち亀では技術による監視の話があります。すぐ見つかった手元にあるやつだと、155巻の「飲酒運転は駄目、ゼッタイ!」という話がそれに当たります。署長が「(飲酒運転の事故などが多発する現代社会の)飲酒の規律を正す為に、一ヶ月間禁酒」命令を署員全員に出します。両さんは「どうせ自己申告じゃん!」と初めから誤魔化す気だったのに、首輪のような監視機器(アルコールを口元に持っていくとセンサーが反応)と、それと連動したケータイ(センサーが鳴ると本部に自動的に連絡する)によって完全な監視下におかれる…という話です。当然ですが無理に機械を外そうとすると、それだけで本部に連絡がいきます。結果、両さんは沢山の誘惑に負けることなく一ヶ月の禁酒をやり遂げます。

…このこち亀の話は今回のGPS携帯のニュースを考える上でかなり示唆的です。一番注目するべきところは、両さんが禁酒に成功したという結果ではなくて、禁酒を成功させる方法そのものについてです。
両さんは署長の目的通り、警察官が飲酒の規範になることに同意して禁酒を成功させたわけではありません。ただ単に監視装置によって飲酒が出来ない状況にあったから禁酒せざるを得なかっただけです。(実際には自分で我慢するところがあるので、ちょっと違うのですが簡略化しました。)

このこち亀の話は、東浩紀氏のいう規律訓練型権力フーコー)と環境管理型権力ドゥルーズ)を上手く表しています。

規律訓練というのは監視者の視線を内在化させることです。
両さんが署長や部長に常に見られていれば、おそらく両さんはお酒を飲まないでしょう。仮に両さんが<真面目>な人であれば、署長や部長がいなくなってもお酒を飲まずに過ごすかもしれません。署長や部長の直接の監視がなくても、自分で自分を律することが出来ます。自分で自分を制御しようとすること、またはその制御の動機自体をインストールする様々な制度が規律訓練型権力と呼ばれます。この規律訓練によって、誰にも見られていないにも拘らず法律を守ったり(そもそも守ろうと思ったり)、悪いことをしないようにしようとします。

でも私たちの知っている両さんは残念ながら<不真面目>なので、署長や部長がいなければお酒を飲むでしょう。規律訓練が成功しているかどうかは<真面目><不真面目>で区別することが出来ると言い換えられます。
今の社会は<不真面目>な人を規律訓練することで<真面目>に矯正出来ると信じることで成り立っています。大きな犯罪を犯した人が刑務所でマトモになって出てくる、再犯しないようになる、という前提でなければ今の法律も裁判制度も成り立ちません。

ところが実際には両さんは<不真面目>なままで規律訓練されません。
両さんに限った話ではなく、最近はモラルの低下が著しいとか、常識のない人が増えているとかという話がありふれているように、<不真面目>な人は現代では沢山います。そして、こうした<不真面目>な人に対応すべく、規律訓練型権力にかわって台頭してきたのが環境管理型権力です。

環境管理型権力の下では、<不真面目>な人が<不真面目>なままにも関わらず、結果として<真面目>に振舞っているように見えます(<不真面目>な人が存在しない)。監視者の視線を内面化させなくても、不都合のないように働いているのが環境管理型権力です。情報・コンピュータネットワーク・電子カード・ゾーニング・アーキテクチャー…などなど、テクノロジーを駆使して人々を監視します。

両さんは<不真面目>ですが、今回は禁酒することに成功(=<真面目>)しました。かといって、<真面目>になったのかと言えば、そうではありません。両さんは首に巻かれた監視装置と、ケータイ-本部のネットワークによって禁酒せざるを得なかったのです。自分の内面を「お酒を飲むのはやめよう」と矯正したのではなく、「飲みたいのに飲めないから諦めた」のです。
他者の視線・規範を内在化させることなく、しかしながら結果としては<真面目>になっている、というのが環境管理のポイントです。

両さんの場合では、お酒の場で飲みたいのを我慢して苦しむ様子が描かれていますが、徹底した環境管理ではそのように苦しむこともなくなると予想されます。
例えば、酒屋や飲み屋の前に電車の自動改札機のような機械を設置します。SuicaやPASMOに代わって自分の情報の入ったカードをかざさなければお店に入ることが出来ないようにします。すると、いつもは酒屋の常連客の両さんが、署長の禁酒令が出た瞬間からカードの情報が書き換えられて酒屋や飲み屋に入れなくなるということが可能です。お酒を目の前にする機会すら奪ってしまうことが出来ます。すると結果的には禁酒せざるを得ないので<真面目>な両さんになります。
解り難いかも知れませんが、これが環境管理型権力です。

かなり横道にそれた気がしますが、警察のGPS携帯に話を戻します。
GPS携帯による位置把握は環境管理型権力にかなり近いものです。本来の目的は仕事の合理化のためとされていますが、GPS携帯を持たされる側にしてみれば実質的に管理されていると感じるでしょう。現場の警察官はかわいそうですが、「(前科があるので)自業自得」と「市民の安全、不安除去の一石二鳥じゃん」という声に対しては何も太刀打ちできないと思います。
と同時に、もし市民も警視庁上層部も、これで現場の警察官が変なことをやらかすことはないぞと思ってしまうような事態はちょっと怖いかなと思います。環境管理システムの具体的欠陥に対する不安ももちろんないわけではないですが(例えば自動改札はまだまだいくらでもキセルできる)、それ以上に警察官のような一般人の模範にならなければならない(とされていた)人達の内面がどうでもいいとは今はまだ思えないからです。もう誰も信頼なんてしてないけど、でも平和に暮らせる世界…はちょっと寂しいなーと思います。
でも逆にどんなに頑張っても<真面目>になれなかった人達、矯正不可能でかつそれを自覚している人達にとってみれば、環境管理によって<真面目>に振舞えるのは救いなんだろうなとも思います。

何はともあれ警察の皆さん頑張ってください。

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